メタバースに参入する百貨店の事例6選を紹介 | 進出理由やメリットは?
新型コロナウイルスの流行が拡大した影響で、さまざまな業界で大きな損失が発生しました。売上が下がった業種は多く、デパート・百貨店業界も例外ではありません。
このような背景から、百貨店業界ではオンラインで新しい購買体験ができると期待されているメタバースに注目が集まっています。
実際、すでにメタバースへの活用を始めている百貨店もあり、今後も発展していくことが予想されます。
この記事では、百貨店がメタバースに進出する理由や、活用事例について紹介します。
百貨店業界がメタバースに進出する理由
まずは、百貨店業界がメタバースに進出する理由について解説します。
以下の項目について解説します。
- コロナ禍で売上が低迷したため
- 若年層の顧客が少ない
- ECでの売上が低いため
コロナ禍で売上が低迷したため
コロナ禍によって売上が低迷した業界は多く、百貨店業界もその中のひとつです。
新型コロナウイルスの感染防止対策によって顧客が減少し、さらに渡航制限によって外国人観光客の数も減ってしまったため、売上の低迷で悩んでいます。
また、昨今の物価高騰などの理由から、消費そのものが減少していることもあり、売上の低下は深刻な問題となっています。
若年層の顧客が少ない
現在、百貨店では若年層の顧客が少なくなっているのが現状です。
これは、インターネット環境が整備され、だれでもネットに接続できる環境になったことから、商品の購買を実店舗からオンラインに移行していることが原因です。
リサーチ会社マイボイスコムの調査(2018年)によると、1万780件の前年代にアンケート調査を行った結果、来店頻度は「ほとんど行かない」が37.1%で最多。「利用経験がない」も8.3%存在し、4割超が百貨店をほぼ利用しないことが分かっています。
また、実物を見なくても購入しやすくなっていることもあり、すべてオンラインで完結することもあります。
さらに、高級品を多く扱う百貨店は、若年層の購買行動と合わないこともあり、百貨店の若年層の減少が進んでいます。
ECでの売上が低いため
百貨店は、他の小売店などと比較してEC化への取り組みが遅れています。
これは、百貨店は対面で接客することを売りとしていて、顧客に合わせた商品などを提案する形態の店舗であるためです。
現在では百貨店もEC化が進んでいますが、ECでの売上の比率は低くなっています。
現在ではオンラインで購入する人が増えているため、ECでの売上を増やすことは重要な課題となっています。
百貨店業界がメタバースに進出するメリット
ここでは、百貨店業界がメタバースに進出するメリットについて解説します。
メリットとしては、以下のものがあります。
- 新しい購買体験を提供できる
- 若年層の取り込みが期待できる
- ECの比率を上げることができる
新しい購買体験を提供できる
メタバースを活用することで、新しい購買体験を提供することができます。
これは、従来の実店舗での購入、ECでの購入とは異なる、第三の購買チャネルとなることが期待されています。
メタバースで行う新たな購買体験では、店舗のスタッフはアバターを使って接客し、実店舗のような形で購入することができます。また、メタバースは仮想空間であるため、実店舗ではできない形のプロモーションも可能になります。
実店舗やECサイトではそれぞれ課題が存在しますが、これらの課題を解消した形の購買体験が提供できると期待されています。
若年層の取り込みが期待できる
百貨店がメタバースを活用することで、若年層を取り込むことができると期待されています。
百貨店は若年層の顧客が少なくなっていますが、若年層を増やすことは難しいのが現状です。
メタバース上には若年層のユーザーが多いため、メタバース上の百貨店に興味を持ってもらい、そこから顧客につなげられるのではと考えられています。
すでに百貨店がメタバース上でのイベントを主催したり、有名キャラクターとコラボするなど、若年層への取り込みが進んでいます。
ECの比率を上げることができる
メタバース上で商品を購入した場合は、ECサイトと同様に購入後に自宅に配送されます。そのため、ECの比率を上げることができます。
メタバースでは、店舗のスタッフがアバターで接客するという形であるため、百貨店の実店舗での販売形態と近いものが提供できます。
百貨店では、対面で丁寧に接客し、顧客に合わせた商品などを提供しますが、これはメタバース上で実現可能であり、ECサイトでは実現できなかった百貨店の特徴を活かすことができると期待されています。
百貨店のメタバースでの活用事例
ここから、百貨店がすでに行っているメタバースでの活用事例について紹介します。
以下の企業について紹介します。
- 三越伊勢丹
- 大丸松坂屋
- 阪神阪急HD
- 阪急阪神百貨店
- 高島屋
- Macy’s
三越伊勢丹
「三越伊勢丹」では、独自のメタバースである「レヴ ワールズ」を提供しています。
メタバースの活用としては、すでに存在するメタバースプラットフォーム内に出店する形式が多いのですが、三越伊勢丹では独自のメタバースを提供しているのが特徴です。
ユーザーはアバターを使うことで、仮想空間内の「バーチャル伊勢丹」でショッピングをすることができます。店舗のスタッフはアバターで対応し、チャット機能などで接客を受けることもできます。
このメタバースでは、ファッションショーが開催されたり、イベントスペースが設置されています。また、人気キャラクターのアバターを用意して、そのキャラクターに会うことができたり、関連するアイテムを購入することも可能です。
現在は、アパレルや食品などをメインで取り扱っていますが、今後は家具や日用品に拡大していく予定です。
大丸松坂屋
「大丸松坂屋」は、世界最大のメタバースイベントである「バーチャルマーケット」に出店しました。
ニューヨークの街並みが再現された仮想空間内に、「バーチャル大丸・松坂屋」を出展し、その中では600種類以上のグルメ商品を購入できたり、大丸松坂屋の歴史が体験できるアトラクションもあります。
食品ブースでは、商品は3Dモデルで再現されていて、形状を実物のように確認することができます。楽しそうですね!
また、バーチャルカタログも用意されていて、実際にその商品を購入することもできます。ここで購入した商品は、後日自宅まで配送されます。
また、このイベントの開催のために、メタバースで働くアルバイトも募集されました。実際にバーチャルでの接客の経験があるアルバイトを採用し、商品知識があるスタッフが商品の魅力などを説明します。
阪神阪急HD
「阪神阪急HD」は、メタバースの音楽フェスとして「JM梅田ミュージックフェス2022」を開催しました。
この音楽フェスは、百貨店がある大阪梅田の街を忠実に再現したメタバースの仮想空間で開催されます。
このイベントでは、VTuberなどによる音楽フェスが開催され、参加者はアバターでフェスに参加し、コンサートを見たり、グッズ販売などもできました。
また、リアリティがある梅田の街を体験することが可能で、8万人以上のユーザーが参加しました。
阪神阪急HDは、仮想空間での街づくりから、ビジネス展開ができると考えています。
阪急阪神百貨店
「阪急阪神百貨店」は、世界最大のメタバースイベントである「バーチャルマーケット」に出展しました。
ユーザーはアバターで参加し、仮想空間にある百貨店内を自由に移動し、さまざまな商品のショッピングを楽しむことが可能です。
アパレルコーナーでは、アバターの店舗スタッフが接客し、ユーザーにあった商品を提案してくれます。気に入った場合は、その商品を購入することができます。また、メタバース内のアバターが着用するアイテムも購入ができます。
食品コーナーでは、実在する有名店が参加し、現実の店舗をイメージした内装の店舗を出展していました。
この店舗についても、ECサイトと連携しているため、実際に購入することができます。
家電コーナーでは、実在する家電を3Dで再現し、実際に確認することができました。
高島屋
「高島屋」は、VRを活用した家具売り場を提供しています。
高島屋の店舗の家具売り場の一角に設置されていて、VRヘッドセットを着用することで、仮想空間に構築されたモデルルームにある家具を体験することができます。
実店舗で家具を販売する場合は、スペースの問題から限定した家具しか置くことができません。バーチャル空間であれば、このようなスペースの問題はないため、多くの家具を体験してもらうことができます。
今後は家具以外にも活用していくことを検討しています。
Macy’s
アメリカの大手百貨店Macy’sは、「Mstylelab」というメタバースを作成しました。
ユーザーはニューヨークをイメージした仮想空間の中でショッピングを楽しめ、巨大な服が歩く独特の世界観が特徴的です。
服に近づくとカートのマークが現れ、ECサイトから商品を購入できるようになっています。
Macy’sのメタバースは、デザインやユーザー体験が洗練されていて、文字通り「未来の百貨店」をイメージさせる魅力的な作りになっています。
百貨店の今後のメタバースでの展開に期待!
ここまで、百貨店がメタバースに進出する理由と活用事例について紹介しました。
この記事の概要は以下の通りです。
- 百貨店業界がメタバースに進出する理由
- コロナ禍で売上が低迷したため
- 若年層の顧客が少ない
- ECでの売上が低いため
- 百貨店業界がメタバースに進出するメリット
- 新しい購買体験を提供できる
- 若年層の取り込みが期待できる
- ECの比率を上げることができる
- 百貨店のメタバースでの活用事例
- 三越伊勢丹
- 大丸松坂屋
- 阪神阪急HD
- 阪急阪神百貨店
- 高島屋
- Macy’s
百貨店は新型コロナウイルスの影響などで売上が低迷していることもあり、その問題を解消するためにメタバースの活用を検討しています。
メタバースを活用することで、若年層の取り込みやECでの売上の向上などが期待できることから、すでにさまざまな活用が進んでいます。
今後もさらなる活用が検討されていて、百貨店の異なる展開が期待できそうですね!!