メタバースは失敗する?否定的な声がある理由や普及の現況を解説
メタバースの活用事例がさまざまな分野で見られるようになりました。
しかしその一方で、メタバースは失敗するという声が聞かれるのも事実です。
本記事では、メタバースが失敗すると言われる理由や普及の現況、今後の可能性などについて解説します。
メタバースとは?
メタバースとは、インターネット上に創り上げられた3次元の仮想空間のことです。
3Dのリアルな世界の中で、自身の分身となるアバターを使って自分の意思で行動できることから、没入感を得られるのが特徴です。
ちなみに、メタバースという言葉は、「超越」を意味する「メタ(meta)」と「宇宙、万物」などを意味する「ユニバース(universe)」が語源となっており、1992年に発表されたニール・スティーブンソン作のSF小説「スノウ・クラッシュ」で初めて使われた造語です。
メタバースの先駆け「セカンドライフ」とは?
セカンドライフは、アメリカ・サンフランシスコを拠点としているリンデンラボ社が開発した、メタバースのプラットフォームです。
2003年にサービスが開始され、大ブレイクした2007年当時は、約100万人の利用者がありました。
現在のメタバースと同じように、アバターを使ったコミュニケーションができ、ファッション、建物などを自分で制作して売買したり、そこで新しいビジネスを構築することも可能でした。
また、そうした活動を通じて得た仮想通貨を、現金通貨に換金できたことも大きな特徴です。
「セカンドライフ」の失敗の理由
しかし、2008年以降は、マーケティング効果を得られなかった参入企業の撤退が相次ぎ、ユーザー数が激減したため衰退の一途を辿りました。
主な原因として、次のようなことが挙げられています。
- 高性能なパソコン・回線が必要
- 収容人数が少なくイベントがなかった
高性能なパソコン・回線が必要
セカンドライフを始めるためには、まず高性能なパソコンと光回線レベルのインターネット環境が必要なため、手軽なノートパソコンでできるようなものではありませんでした。
そして、専用のソフトをダウンロードして設定を自身で行う必要があるうえに、ソフトウェアがアップデートされる度にダウンロードしなければならず、非常に手間がかかるものでした。
また、導入の障壁を乗り越えたあとにも操作方法が難しいことから、ユーザーが離脱してしまう結果となりました。
収容人数が少なくイベントがなかった
セカンドライフは、シムと呼ばれる1つの空間に最大50人までしかアクセスができなかったため、現在のメタバースにあるような、ユーザー同士が集まるイベントは開催されませんでした。
つまり、会議や講義、ライブなど、メタバース内で共通の目的を持つユーザー同士が集まる空間がなかったということになります。
また、セカンドライフの特徴として、ユーザーが自由にシムを作れることから、シムが増えすぎてしまい、ほとんどのシムに人がいない状態となってしまいました。
同じ目的を持ったユーザー同士が集まれる環境がないことは、飽きを生みだします。
こうした点も、セカンドライフからユーザーが離脱する原因となりました。
しかし、現在は技術の進歩により改善されている点もいくつかあり、いまだ60万人以上のユーザーを獲得しています。
メタバースは失敗すると言われる要因
ここからは、現在メタバースが失敗すると言われている要因はどこにあるのかを探っていきましょう。
まとめると次の3つです。
- メタバースが理解されていない
- ある程度のITの知識や技術が必要
- VR機器が普及していない
1つずつ詳しく見ていきましょう。
1. メタバースが理解されていない
メタバースが失敗すると言われている要因の1つとして、既存のオンラインゲームとさほど変わりない、と思われていることです。
確かに、アバターを使ってゲームを楽しむことが目的であれば既存のもので十分ですが、新しいビジネスチャンスを掴む手段としても有効であることを知る必要があります。
NFTを駆使したゲームでの換金や、不動産売買、ライブなど、現実世界と同じような経済活動を行うことができるのです。
2. ある程度のITの知識や技術の習得が必要
メタバースを利用する際には、ある程度のITの知識や技術が必要です。
操作性はもちろん、機能を自在に操れるための理解がなければ使いこなすことは困難です。
アバターを操作すること、他人とのコミュニケーションをとることなど、何度も1つ1つ確認しながら進めていては利用することも面倒になってしまいます。
まず自分のスキルを身につけるところからはじめる必要がある場合には、時間と労力を要するでしょう。
しかし、最近では初心者が取り組みやすいサポート体制も工夫されているため、そうしたサービスを利用することで知識や技術の習得もしやすくなっています。
3. VR機器が普及していない
メタバースを十分に楽しむためには、ある程度の高性能なVR機器を使用することが推奨されます。
中でも、VRゴーグルはコミュニケーションのとりにくさを軽減しやすいと言われていますが、初期費用がかかることや装着が面倒という理由から、メタバースを始めにくい原因となっています。
しかし、近年では技術の向上によりワイヤレスのものがあったり、価格も下がりつつあるため、以前よりも手にとりやすくなっています。
メタバースの普及の可能性
メタバースは、失敗するという声がある中、現在はメタバース活用の事例が増加していることも事実です。
ここからは、メタバースの普及の可能性が感じられる現況を見てみましょう。
ここでは、3つの現況について解説します。
- コロナ禍による生活様式のシフト
- 大手企業の参入
- 関連技術の進歩
1つずつ見ていきましょう。
1. コロナ禍による生活様式のシフト
2020年に世界各国に拡まった新型コロナウィルスの感染防止対策は、メタバースが見直されるきっかけにもなりました。
行動や経済活動が制限されることで、自宅にいながらの買い物やイベント、旅行などの仮想体験ができるメタバースが注目され、導入する家庭や企業が増加しました。
2. 大手企業の参入
ゲームをはじめエンターテイメント市場のイメージが強いメタバースですが、近年では大手企業によるビジネス活用もかなり進んでいます。
すでに、実際にメタバースを活用している例として次のような企業があります。
- adidas
- NIKE
- zozo
- ANA
- 損保ジャパン
- Panasonic
- KDDI
- サイバーエージェント etc.
小売業界、観光業界、金融・保険業界など、さまざまな業界の大手企業がメタバースに参入し、新たな取り組みを行い成功を収めています。
3. 関連技術の進歩
メタバース関連の技術の進歩や発展も、メタバースが再び注目されるきっかけとなっています。
具体的には、5Gのような通信技術やコンピューターの処理能力の向上など、セカンドライフが流行した時代と比較すると、かなりスムーズな体験が可能となりました。
特に、通信速度においては大幅な改善しており、今後もさらなる進歩が期待できるでしょう。
他にも、メタバースの今後の可能性に期待できるさまざまな現況が存在します。
これからのメタバースはさらなる普及の可能性が期待される!
いかがでしたか?
メタバースが失敗すると言われる要因や、これからの普及の可能性について解説してきました。
本記事のポイントをまとめると次のとおりです。
- 近年はさまざまな業界の大手企業がメタバースに参入している
- セカンドライフの衰退の原因は「高性能なパソコン・回線が必要」だったことや「同じ目的を持つユーザー同士が集まれる環境がなかった」ことなど
- メタバースが失敗すると言われている理由は「メタバースが理解されていない」ことや「ある程度のITの知識や技術の習得が必要」なことなど
- 現在は「コロナ禍による生活様式のシフト」「大手企業の参入」などから、メタバースの普及の可能性が期待されている
セカンドライフの衰退により、一時は否定的な意見が多かったメタバース。
しかし、近年は多種多様な業界がメタバースに参入し成功例も多く見られます。
現段階での活用事例などから予測されるように、今後はメタバースを活用した新しい取り組み・展開が期待されるでしょう。