メタバースクリニックとは?医療への活用方法とメリットについて紹介!
近年さまざまな分野で活用が進んでいるメタバースですが、医療分野でも取り組みが始まっています。
この記事では、メタバースを医療分野で活用するメリット・問題点とその活用方法、活用事例について解説します。
メタバースとは?
メタバースとは、「超越した」という意味を持つメタ(meta)と、「世界」という意味を持つユニバース(universe)の2つの言葉を組み合わせた造語です。
具体的には、オンライン上に構築された3次元の仮想空間内で、アバターを通じて交流することを指しています。
AR技術やVR技術と組み合わせることで、リアリティがある体験をすることができます。
クリニック・医療でメタバースを活用するメリット
ここでは、クリニックなどの医療分野でメタバースを活用するメリットについて解説します。
メリットには、以下のものがあります。
- 対面と同等のコミュニケーションが取れる
- 能動的な体験ができる
- 現実では体験できないことも実現できる
対面と同等のコミュニケーションが取れる
メタバースを活用すれば、医師と患者が距離に関係なくコミュニケーションをとることができます。
近年では遠隔医療が進んでいますが、基本的には画面を通じてのやりとりになるため、対面と同等なコミュニケーションをとることは難しいのが現状です。
メタバースを活用して、仮想空間内にアバターとして集まれば、より対面に近い形でのコミュニケーションが可能になります。
また、地方在住のため、学会などへの参加が難しいケースでも、メタバース内で学会を開催することで、参加しやすくなります。
このように、僻地医療の課題の解決のためのひとつの方法として期待されています。
能動的な体験ができる
メタバースの仮想空間内では、アバターを通じて行動することができます。
アバターは、自分の動作などがすぐに反映されるため、メタバース内でシミュレーションをすることが可能です。
例えば研修生や医療従事者が、臨床状況をメタバース上で再現し、そこで練習することもできます。
研修などでは動画を視聴することが多いのですが、これは基本的には受け身です。
メタバースであれば、アバターを使って自ら行動するなど能動的な体験ができるため、従来の研修よりも記憶が定着しやすく、高い学習効果も期待できます。
現実では体験できないことも実現できる
メタバースはCGで構成された仮想空間であるため、現実では実現できないことも再現できます。
例えば、人体をメタバース上で再現し、その内部に入ることができるようにすれば、その体験を研究に活用することも可能です。
また、リハビリの分野でも、患者に役立つ非日常の空間を構築することもできます。
現実では実現できない場面を活用することで、より高い効果が期待できるでしょう。
メタバースのクリニック・医療分野での活用方法
ここでは、メタバースを医療分野で活用する際の方法について解説します。
活用方法には、以下のものがあります。
- 遠隔医療
- 学会
- 研修
- 面会
遠隔医療
メタバースは遠隔医療でも活用できます。
患者と医者がメタバース内で行動することで、医師に相談することが可能です。
現実では移動が困難な患者や、遠方に在住しているため移動することが難しい場合などは、メタバースを活用すれば医師と面談できるようになります。
医療行為については、対面しなければできませんが、問診の段階であれば、メタバースの仮想空間内でも可能です。
患者にとっては、通院する頻度を下げることもできるため、負担を軽減することができます。
学会
医療の世界では、定期的にさまざまな場所で学会が開催されています。
この学会に参加するためには、現地まで移動する必要があります。
ただ、時間や距離などの問題から参加が難しいケースもあります。
メタバースを活用して、仮想空間内で学会を開催すれば、アバターとして参加することが可能で、距離に関係なく対面と同等のコミュニケーションをしながら学会に参加できます。
研修
メタバースは医療の研修にも活用することができます。
医師は実際の手術を行う前に、シミュレーションをしておくことが重要ですが、現実では実施できるシミュレーションにも限界があります。
メタバース内で手術の状況を再現することで、事前に手術のシミュレーションをすることで、練習することが可能です。
手術は人体に影響があることから失敗は許されませんが、メタバース上のシミュレーションであれば失敗することもできます。
事前にさまざまな状況をシミュレーションしておくことで、現実での手術などでの失敗を防ぐこともできるでしょう。
面会
メタバースを活用すれば、患者と家族の面会も可能になります。
新型コロナウイルスの影響で、多くの病院では面会禁止となり、家族などと面会できなくなりました。
メタバースを活用すれば、実際に対面しなくても、対面したかのようなコミュニケーションができるため、患者にとっては安心できるでしょう。
メタバースのクリニック・医療分野への活用の問題点
ここまで、メタバースの医療分野への活用のメリットなどについて解説しましたが、注意点も存在します。
特に問題となるのが、個人情報保護の問題です。
メタバースを活用して遠隔で問診する場合、オンラインでやりとりすることから、情報漏洩などのリスクが発生します。
また、メタバースはできてからの期間が短いこともあり、法整備が進んでいません。
医療分野では、繊細な情報を扱う必要があるため、安全に運用できるようにするために、セキュリティ対策が必要になります。
今後整備されると予想されますが、現時点では問題点が残っていると言えます。
医療分野でのメタバースの活用事例
ここでは、医療分野でメタバースを活用している実際の活用事例を紹介します。
以下の活用事例について紹介します。
- 順天堂バーチャルホスピタル
- メタバースクリニック
- Remedy XR メタバース
- VRワクチン注射シミュレーター
順天堂バーチャルホスピタル
引用元:https://goodhealth.juntendo.ac.jp/medical/000319.html
順天堂大学と日本IBMでは、メタバースを活用した医療サービスの共同研究を2022年4月から始めています。
共同研究では、短期テーマと中長期テーマの2つに分けた研究がされています。
短期テーマとしては、「順天堂バーチャルホスピタル」というものがあり、メタバースを利用して患者などが来院前に病院の雰囲気を知ることができることを目指しています。
また、このバーチャルホスピタル内で患者と家族がアバターで交流できることも実現予定です。
中長期テーマとしては、メタバースの仮想空間内で活動することで、メンタルヘルスなどの疾患が改善できるかどうかを検証する計画が進んでいます。
この結果によっては、メタバースの医療分野への活用がさらに進むことが期待されます。
メタバースクリニック
引用元:https://metaverse-clinic.jp/
「メタバースクリニック」は、株式会社comatsunaが提供しているメタバースです。
このメタバースクリニックでは、医療従事者との無料相談が可能となっています。
匿名のアバターで入室することで、悩み相談や座談会、各種イベントなどに参加することができます。
このメタバースクリニックは、福井県越前市と連携して「越前市メタバースこころの保健室」というサービスも始めています。
このサービスでは、誰でも入室できる共有空間と、個別相談が可能な個室空間を用意していて、ひきこもりの支援などを行っています。
Remedy XR メタバース
引用元:https://www.remedy-company.com/expertise/digital.html
「Remedy XR メタバース」は、医療分野に特化した形のメタバースプラットフォームとなっています。
「個人を特定できる空間」と「匿名性が高い空間」が用意されていて、用途に合わせて使い分けることができます。
「個人を特定できる空間」では、学会や教育機関の授業などに活用できます。
「匿名性が高い空間」では、匿名によるカウンセリングや患者同士のコミュニケーションなど、プライバシーを保護しながらメタバースを利用することができます。
VRワクチン注射シミュレーター
引用元:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-04-27
「VRワクチン注射シミュレーター」はイマクリエイトが提供しているサービスで、VR内で注射のシミュレーションをすることができます。
VR内では模型が表示され、その内容に従うだけで筋肉注射の手順を習得することができます。
実際に患者に注射をするまでには多くの準備が必要です。
ただ、そのためにはトレーニングのための用具を補充する必要があったり、多人数が同時に練習できないなどの問題があり、医療現場での問題となっています。
VRワクチン注射シミュレーターを導入することで、設備などを使わずにいつでもトレーニングができるようになります。
今後のクリニック・医療へのメタバースの活用に期待!
ここまで、メタバースの医療分野への活用について、メリットや問題点、活用事例などについて解説しました。
本記事の内容は以下の通りです。
- メタバースとは?
- クリニック・医療でメタバースを活用するメリット
- 対面と同等のコミュニケーションが取れる
- 能動的な体験ができる
- 現実では体験できないことも実現できる
- メタバースのクリニック・医療分野での活用方法
- 遠隔医療
- 学会
- 研修
- 面会
- メタバースのクリニック・医療分野への活用の問題点
- 医療分野でのメタバースの活用事例
- 順天堂バーチャルホスピタル
- メタバースクリニック
- Remedy XR メタバース
- VRワクチン注射シミュレーター
メタバースの医療での活用は進んでいて、遠隔での問診や研修などの分野で役立てています。
また、今後さまざまな分野で活用するための研究も進んでいます。
現時点ではセキュリティ面などの法整備の遅れなどの問題がありますが、今後さらに発展していくことが期待されます。