インバウンドマーケティングとは?BtoBとBtoCの事例12選をわかりやすくご紹介!
わたしたちがオンラインで料理のレシピを検索するとき、数多くのブログやYouTubeチャンネルが役に立つ無料のレシピや料理のヒントを提供しています。
動画レシピを楽しむことでそのブログやチャンネルを定期的に訪れるようになり、最終的にそのコンテンツの中で紹介される調理器具や食材の購入を思わず買ってしまったという経験はありませんか?
ビジネスを伸ばして行く上で集客は、非常に大切になります。しかし、集客を広告に頼り切って広告経由で入ってきた顧客の中には自社商品やサービスを購入する気持ちは薄く、期待値の低い問い合わせのみでいっこうに購入や契約に繋がらない。そんなご相談をよく受けます。
もし、先ほどのレシピの動画の事例のように思わず買ってしまうように広告費をかけることなくユーザーが自社のコンテンツを見て購入を前提に問い合わせをしてきたらいかがでしょうか?
今回は、そんな理想の経営を叶える解決策となるインバウンドマーケティングについて話していきます。
インバウンドマーケティングとは
インバウンドマーケティングとは、米国で世界シェアNo.1のマーケティングオートテーションソフトHubSpot(ハブスポット)を開発したHubSpot社が最初に提唱した概念です。
インバウンドマーケティングは、顧客が自ら企業の製品やサービスに興味を持ってもらうことで購買意欲を育成していくマーケティング手法です。
マス広告やDM、テレマーケティングなどを通じて消費者の認知や関心を引きだし、購入などの行動に結びつけていく従来型のアウトバウンド・マーケティングとは対局にあります。
それぞれのマーケティングに用いられる具体的な手法を対比すると、以下のようになります。
具体的には、SEO(検索エンジン最適化)、動画やセミナーコンテンツ、SNSなどを通じて、顧客に価値ある情報を提供し、自社のウェブサイトやブログに自然に導くことを目指します。
これにより、信頼関係を築き、最終的には商品やサービスの購入につながるリード(見込み客)を獲得します。インバウンドマーケティングは、従来の広告や直接的な販売促進とは異なり、顧客の関心を引きつけることに焦点を置いているのがポイントです。
インバウンドマーケティングの基本概念
インバウンドマーケティングの基本概念は、「見込み客を惹きつける」、「関係を築く」、「満足してもらう」という3つのステップに分けられます。それぞれ見ていきましょう。
①見込み客を惹きつける(Attract)
潜在顧客のニーズを満たすような価値あるコンテンツを提供して引き付けます。この段階での施策は主にWEB記事や動画などのコンテンツ発信などが該当します。
段階としては、自社のWEBサイトや動画などのコンテンツを閲覧してくれているもののまだ名前も顔も分からない状態です。
②関係を築く(Engage)
WEBや自社のコンテンツを閲覧しているユーザーが、問い合わせフォームの提出、ニュースレターの登録などサイト訪問者からリード(見込み顧客)に変わり、商談に移っていく段階を指します。
顧客との対話を通じて関係を築き、個々のニーズに合わせたカスタマイズされた情報を提供します。ここでは、ユーザーの顔や名前が明確な状態です。
③満足してもらう(Delight)
見込み顧客が自社サービスや商品の顧客となり、問題を解決できるように支援し、満足度の高いサービスを提供する段階です。
顧客が成功することで、口コミが生まれて、新しいリード(見込み顧客)を引き寄せることができます。インバウンドマーケティングでは、これらのステップを通じて顧客との長期的な関係を築くことに重点を置いています。
これにより、単なる一度きりの購入ではなく、継続的な顧客満足とブランドのファンを生み出すことを目指しています。
インバウンドマーケティングをさらに理解する上で漏斗(ファネル)とはずみ車(フライホイール)を比較すると分かりやすいのでご紹介していきます。
漏斗(ファネル)とはずみ車(フライホイール)の違い
漏斗(ろうと)は、理科の実験などで使う入り口から出口に向かって狭くなっていく濾過装置です。ファネルとも呼ばれます。
一方ではずみ車(フライホイール)は、もともとは物理学の概念で、大きな輪またはディスクが中心軸周りに回転することで運動エネルギーを蓄え、一定の速度で動作を維持する仕組みを指します。
マーケティング業界としてのこの両者を例えたモデルをそれぞれ見ていきましょう。
漏斗(ファネル)モデル
定義としては、伝統的なマーケティングモデルで、顧客が購入に至るまでの一連の段階を漏斗状に表現したものです。
通常ビジネスでは、「認知 → 興味 → 検討 → 購入」といった段階を経て顧客が獲得されます。
つまり、下の図のように顧客は一方向に流れ、最終的に購入という結果に到達します。
漏斗(ファネル)は、図を見てわかる通り各段階で潜在顧客が減少していく様子を表します(多くのリードが途中で脱落する)。
つまり、顧客獲得後の関係が考慮されにくい。各段階が独立していて、顧客体験の継続性が欠ける場合があるのが欠点とも言えます。
はずみ車(フライホイール) モデル
フライホイールは、もともとは物理学の概念で、大きな輪またはディスクが中心軸周りに回転することで運動エネルギーを蓄え、一定の速度で動作を維持する仕組みです。
インバウンドマーケティングの考え方に基づくモデルで、顧客体験を中心にビジネスの成長を促進する循環的なプロセスを表します。
主に記事冒頭でご紹介した「引き付ける(Attract)」、「関与させる(Engage)」、「喜ばせる(Delight)」の3つの連続したフェーズから構成されます。
顧客の獲得だけでなく、継続的な関係構築と口コミなどによる新規顧客の獲得を促進するのが特徴で顧客の成功と満足がビジネス成長の原動力になると考えます。
前提として顧客との長期的な関係を重視し、継続的なビジネス成長を目指します。各段階が密接に関連しており、顧客体験の向上に寄与しています。
ビジネスで目指していくべきは下図のようなはずみ車(フライホイール)モデル=インバウンドマーケティングとなります。
見込み顧客を惹きつけ、信頼関係を築き、満足させる。そして満足した顧客が新たに見込み顧客を紹介してもらい、自社のビジネスが回り続け、成長するサイクルそのものを表します。
このフローはビジネスを成長させる上で必須な要素で以下にこの3つの動きを滑らかに回転させ(各フェーズに移行する時の摩擦を減らせるか)、エネルギー(満足する顧客や知見の総数)を貯められるか?という考え方からはずみ車の概念が採用されています。
我々ビジネスマンが常に意識しなければならないのはいかに漏斗(ファネル)ではなくはずみ車(フライホイール)で考えるかです。
いかに顧客を惹きつけるコンテンツを作成して最大の満足を提供できるかということが大切です。
見込み顧客は、営業に会う前に購入の意思決定が決まっている
インバウンドマーケティングに関連する事例として海外論文(149 Eye-Opening Sales Stats to Consider in 2023によるとセールスは、営業に会うまでに終わっていると述べられています。
BtoBの購買プロセスには平均7人の意思決定者が関わっており、また、バイヤージャーニーの50〜90%は、ユーザーが営業担当者とやり取りする前に完了しているのです。
この行動の変化は、現場の内外を問わず、どの営業チームも真剣に受け止める必要があります。
最近では、生成AIの登場により検索エンジンの利便性向上も相まってユーザーの検索体験はより容易になり、顧客や消費者にとって収集したい情報によりアクセス出来るようになってきました。
より購入に至るまでの情報収集を顧客自身が行っていくような状態は加速するでしょう。
【BtoB】インバウンドマーケティングの3つの事例
それでは、ここからは実際のインバウンドマーケティングを行っているBtoB企業の事例を紹介していきます。
早速見ていきましょう。
事例①HubSpot
HubSpotは、ソーシャルメディアからSEOまで幅広いデジタルマーケティングトピックに関する豊富な無料コンテンツを提供しています。
これらのコンテンツは、WEBサイトに訪れたリードに対して氏名やメールアドレスを入力させることで顧客情報を入手しています。
HubSpotは、マーケティングオートメーションツールとして定評があるためあらゆるマーケティング関連のお役立ち資料を提供することでマーケティングに課題を抱えた企業担当者のリードを効率よく収集し、課題解決を図り、リードとの多くの関係性を築いています。
事例②Mailchimp
Mailchimpは、ユーザーがメールマーケティングを最大限に活用できるようにユーザーフレンドリーなガイドやチェックリストを提供しています。
これらのコンテンツは、新たなリードを育成するのに役立ちます。
事例③カオナビ
カオナビとは、社員の個性・才能を発掘し、戦略人事を加速させるタレントマネジメントシステムです。顔写真が並んだシンプルな画面で、社員のスキルやモチベーション、評価などの人材情報を一元管理できます。
当社が運営するWEBメディアでカオナビ人事用語集は、人事担当者向けに人事に関するお役立ちコンテンツを頻繁に発信しています。
カオナビは、マーケティングオートメーション(MA)ツールをインサイドセールス(IS)のメインツールとして活用し、見込み顧客の検討状況に応じた適切なアプローチを行っています。
インサイドセールスを組織の司令塔として位置づけ、マーケティングとフィールドセールスの間に位置するインサイドセールスこそに、最も多くの情報が集まり、そのため顧客の流れを俯瞰できる立場であると考えています。
事例④freee株式会社
freeeは、クラウド会計ソフトの企業です。自社のメイン顧客層である中小企業や個人事業主に向けて、経理や会計に関するコンテンツを「経営ハッカー」というオウンドメディアで発信しています。
freeeは、人事労務freeeや会計freeeなど幅広いカテゴリ毎にソフトを提供しているため、初期設定方法や応用編などの勉強会を定期開催し、freeeをより効果的に活用したい企業担当者向けに役に立ってナレッジを提供しています。
事例⑤Slack(スラック)
Slackは、プラットフォームの使い方とメリットを解説するチュートリアルビデオを作成しています。
これらのビデオは、潜在顧客にサービスについての機能やできることを紹介し、B2B購買者の意思決定プロセスをサポートします。
また、Slackコミュニティも運営しており、様々なユーザーの活用法やセミナーも定期的に開催することでユーザーに価値あるナレッジとコミュニティメンバーとの出会いを提供しています。
事例⑥株式会社サイル
株式会社サイルは、BtoBマーケティングや法人営業・新規事業のコンサルティングサービスを提供する会社です。
サイルのインバウンドマーケティングの取り組みとしては、以下のようなものがあります。
自社のWebサイトやブログで、BtoBマーケティングや法人営業・新規事業に関するメソッドや事例を公開し、見込み顧客の信頼を得ています。
そのコンテンツの中には、情報を入力する必要がなくダウンロードができるコンテンツも数多く存在し、非常にオープンソースでお役立ち情報やBtoBの知見を共有しています。
また、YouTubeでもコンサルタントがBtoBのビジネスやマーケティング、法人営業について解説する動画を配信し、見込み顧客の興味を引きます。
【BtoC】インバウンドマーケティングの6つの事例
事例①マネーフォワード
「みんなの家計相談-MONEY PLUS」では、住まい、生活、老後、趣味まで幅広い人生のお金の悩み相談にプロが回答しています。
プロの視点からの詳しい解説やアドバイスは、類似した悩みをもつユーザーにとって有益なコンテンツとなっています。
事例②カエライフ
カエライフは、株式会社ホンダアクセスが運営するWEBメディアです。クルマ、キャンプ、アウトドア、車中泊に関する雑学・情報を提供しています。
記事の内容も車中泊をするためのテクニックや注意点など車中泊、アウトドアにキュレーションされたコンテンツとキャッチフレーズは、バンライフ好きのコミュニティを引きつけ、関連商品への興味を醸成しています。
まさに顧客を惹きつけるインバウンドマーケティングの良い例であり、特定の趣味に基づいて集客を図っていると言えます。
事例③ママタス
多様なトピック: ママタスでは、育児のヒント、レシピ、DIY、健康ケア、美容、ファッショントレンドに至るまで、幅広いトピックスを提供しています。
母親の日常のニーズと興味に合わせて作られており、彼女たちの生活をより簡単で楽しいものにするための実践的なアドバイスやアイデアを提供します。
Instagramのフォロワーも75万人を超えており(2023年12月現在)、妊娠・出産・育児に関する悩みや疑問に答えるコンテンツを配信し、ユーザーの信頼を得ています。
特にショート動画(リール動画)のコンテンツは中には40万回以上再生されているものも数多くあり、スマホで手軽に情報収集したいママ層の興味関心を惹きつける好例と言えるでしょう。
事例④YOURMYSTAR STYLE
YOURMYSTAR STYLEは、ユアマイスター株式会社が運営する自由なファッションとライフスタイルを網羅するWEBメディアです。
ファッションアイテムからコスメ、アクセサリーまで幅広く取り扱い、専門家や著名人のインタビューやスタイリング提案を通じて、読者にインスピレーションを提供しています。
購入者を対象とした豪華賞品が当たる抽選などの特典も発信し、これらは読者を魅了し雑誌やサイトへの訪問、リピート購入を促しています。
事例⑤hadato
hadatoとは、「肌を知る。キレイが分かる。」を合言葉に、スキンケアやメイクに関する情報を正しく・分かりやすく提供する美容メディアです。
インバウンドマーケティングの目線で見ると、hadatoは以下のような特徴があります。
美容皮膚科医などの数多くの専門家が記事の監修者としてコンテンツ制作を行っており、信頼性の高いコンテンツを発信しています。
SNSやメルマガなどでコンテンツを拡散し、自社サイトへの誘導を行っています。
自社サイトでは、美容成分図鑑やコスメコンシェルジュなどの有益な情報を提供し、ユーザーのニーズに応えています。
自社サイトでのコンテンツ閲覧や資料ダウンロードなどの行動をトラッキングし、ユーザーの検討状況に応じたアプローチを行っています。
事例⑥保育士バンク!
WEBメディア保育士バンク!は、保育士の求人転職情報や保育士にとって役に立つ情報を発信するWEBメディアです。
LINEの登録者も9,500人以上(2023年12月現在)おり、エージェントに転職相談ができるような仕組みやInstagramでは保育士が日々頭を悩ませている子供に対する工作物の制作アイデア集、保育士の仕事に関するQ&Aなどを網羅的に発信することでユーザーにとって役に立つ情報や機会を創出しています。
保育士を採用したい人と保育知識を求めているユーザーのリードを両方収集している模範的な事例だと言えます。
インバウンドマーケティングの活用に適している企業と適していない企業
実際にインバウンドマーケティングを始めるにあたりどのような企業が適しており、一方で適していないのでしょうか?
それぞれの企業の特徴を見ていきましょう。
インバウンドマーケティングが適している企業
1.長期的な顧客関係を重視している企業
インバウンドマーケティングは、軌道に乗るまで時間がかかるため、長期的な顧客関係の構築と維持を目指す企業に適しています。
2.ユーザーに対して教育や情報提供を必要とする製品/サービスを提供する企業
利用にあたり複雑な製品やサービス、または新しい市場に参入している企業は、顧客教育が重要なため、インバウンドマーケティングで有益な情報を提供することが有効です。
3.オンラインでのプレゼンスが強い、または強化しようとしている企業
ウェブサイト、ブログ、ソーシャルメディアなど、オンラインでの活動が活発な企業は、インバウンドマーケティングを利用してより大きな影響を与えることができます。
4.ニッチ市場に特化している企業
特定のニーズや興味を持つ小さなターゲットオーディエンスにアプローチする場合、インバウンドマーケティングは非常に効果的な手段となります。
例えば、「掃除機」というキーワードだと競合が多いけど「掃除機 ベッド専用」というキーワードは競合が少ないので勝ちやすいなどが挙げられます。
インバウンドマーケティングが適していない企業
1.短期的に成果を求める企業
インバウンドマーケティングは結果が現れるまでに時間がかかるため、短期間での高いROI(投資利益率)を期待する企業には適していません。
2.規制が厳しい業界の企業
医薬品や金融サービスなど、規制が多く内容制限が厳しい業界では、コンテンツ作成の自由度が限られるため、インバウンドマーケティングの効果が制限される可能性があります。
3.リソースが限られている企業
インバウンドマーケティングは、有益なコンテンツを継続的に作成し配信することが必要です。
このため、リソースや時間が限られている小規模企業やスタートアップにとっては実行が困難な場合があります。
4.ターゲットユーザーがオンラインで活動していない企業
高齢者や特定の地域限定のビジネスの集客をするなどターゲットオーディエンスがオンラインメディアをあまり利用していない場合、インバウンドマーケティングの効果は限定的です。
オフラインの顧客との接点が多い業界では、ビラやチラシなどの他の施策がより適している可能性があります。
事例を参考にインバウンドマーケティングに取り組もう
いかがだったでしょうか??
インバウンドマーケティングは、顧客との信頼関係を築き、長期的なビジネス成果を実現するための強力な手法です。
正しく理解し、戦略的に実施することで、ターゲットオーディエンスに共感され、ユーザーそして顧客との持続的な関係を築くことができます。
今日からあなたのビジネスにインバウンドマーケティングを取り入れ、顧客とのより深い繋がりを育みましょう。
結果は時間をかけて確実に現れるでしょう。